(11)入山4日目

1月2日(金)

再びチョムロンへ 帰ってきたよ! インドラちゃん

(デウラリ ⇒ ヒンクー・ケイブ ⇒ ヒマラヤ・ホテル ⇒ ドバン ⇒ バンブー ⇒ クルディ・ガール ⇒ シニュワ ⇒ チョムロン)

また朝5時前に目覚める。昨夜寝たのが8時ごろだから9時間は寝た計算になる。
でも3日も歩いているので腰から下の筋肉が強張っているようだ。足は念入りにテーピング しているので傷めた様子もない。ここから下は雪もなく雨さえ降らなきゃ快適な山歩き (下山)になるはずだ。本日はチョムロン村まで戻る予定。

朝7時30分、デウラリを出発。谷沿いのだらだらの路を快適に下る。3日も山歩きをしていると 脚力がついて足の運びがうまくなったようで下りにも拘らず確実にグリップするようになった。
今まで3日以上続けて山歩きしたことなかったもんなぁ。ディーパックと そんな話をしながら歩いていると下から登山者が(白人男性)2名やってきた。
その彼がたかじろうを見止めると”あんた、ニッポン人だろ?”と言ってきた。非常に 分かり易い英語なので非英語圏の人たちのようだ。そうだ、と応じるとその男は、君こそ 私の捜し求めていた人だと言わんばかりのようで一気にまくしたて始めた。
”俺らね、昨日の晩バンブーに泊まったんだけど、そこに泊まった下山途中の日本人が 今朝別れ際にもう要らないからってこれくれたんだけど・・・一体何これ?”
彼のポケットから出てきたのはホカロンであった。未使用のそれの裏書きはさすがに 日本語でしか記述がなくそれを解さない彼らの目には一体なんと映ったことだろう。
”これはねっ、君が寒いと思った時袋を破って中身をようく揉んでやると君はこれにより 暖かくなることができるのだよ。body warmer だよ、portable なやつ。”すると 彼らはいたく感心することしきり、これで世の中の全ての謎が解けたとような晴れやかな 顔つきで歩きはじめた。

ところでガイドのディーパックであるが、昨日から日本語の勉強を始めた。
もちろんたかじろうが教えるのだが、なかなか覚えが速いのに驚く。もともどディーパック はカトマンズでは国際法規を学ぶ学生でトレッキング・シーズンは山で学費を稼いで いるのである。4月後半からの雨季のあいだ勉学に勤しむのだそうだ。
トレッキング・ガイドをするなら客として多いフランス人相手が儲かると思いフランス語に トライしたのだけれど文法と発音のせいで断念したという経緯があるらしい。
同様にドイツ語も止めて、やっぱりニッポン語にするそうだ。
ネパール語と英語を解する彼としてはひらがな(ローマ字表記)とその発音(母音構成) のみならず文法(品詞の並び)がネパール語に非常に似ているとかでたいへん優秀だ。
単語、センテンス丸覚えでなく文法を理解しているのでちょっとコツを教えただけで 疑問文に直せる。
恐ろしいことにどうやら助詞の変化をなんとなく理解しているようで案外で正しい日本語を話す。 もちろん単語数が絶対的に少ないのだがこの上達度には驚いてしまった。
最初のうちはどうせ自己紹介と挨拶程度だろうと思っていたところが これは大変なことになってしまった。キチンと日本語習った方が良いと薦めると 今度の雨季に日本語カレッジに行くという。そこでたかじろうは日本に帰ったら 日本語テキストを送ることを約束した。
山岳警察の詰め所のあるクルディ・ガールまで3時間弱、昼食を摂ったシニュワまで さらに40分。振り返ってももう開けた眺望はない。ここまで来るとチョムロン村は もう目の前、同じ程の高さに見える。だだし谷を一旦下ってまた登らなければならない。
今回の行程での最後の登りだ。目指す山小屋インター・ナショナルは村の一番高い場所に 位置する。人里に近いので家畜である牛がよくトレイルをうろついている。気を付けて 歩かねば・・・決して牛が恐いわけでなく、道々に山のようになっているクソにがたいへん 恐ろしいのである。犬猫のそれと違い誤って踏もうものなら足首まで埋まってしまうやも しれん大物だらけである。靴の底に張り付くだけのとは訳が違う。谷底の川に架る 吊り橋を渡り登りに入って45分、やっとインター・ナショナルに到着。

”インドラー、帰ってきたよーっ”と叫ぶと”大きな栗の木の下で”を歌いながら (もちろん日本語で)迎えてくれた。前回と同じ部屋に荷を置き、まずはトイレに駆け込む。
うーむ、今日は何回目かなぁなどど考えつつ用を済ます。標高が高く気温の低い昨日や 一昨日はほとんどオシッコに行かなかった。決して水分を摂っていないわけでなく、 却って余計に飲んでいた筈だけど。やはり呼吸で失われる水分が相当あったのだ。
だから今日のトレッキングで体が徐々にではあるが元にもどっているのだ。本では 読んだことがあったけどホントなんだなーなどと思いながらまたその源である サン・ミゲールを呑む。夕陽にあたるサウス、ヒンチュリ、マチャプチャレを眺めながら ひとりで呑んでいるとディーパックが昨日書いてやったひらがな表をもってやってきた。
ちょっと待てよ、こっちは呑んでんだからぁ。と、言ってみても結局いつまでも呑んで いるわけだから後になっても付き合ってもらえないことがよく分かっている彼も 怯まない。結局、その表では発音できない濁音、吃音、拗音などを新たに書き足した。
それにしても上達速いぞ。


(12)入山5日目
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