(9)入山2日目

12月31日(水)

標高2800mのヒマラヤ・ホテルは遠いのか

(チョムロン村 ⇒ シニュワ ⇒ クルディ・ガール ⇒
バンブー ⇒ ドバン ⇒ ヒマラヤ・ホテル)

 その頃、ようやく我がバディのディーパックが起き出してきた。そそくさと 朝食をとり荷物をまとめ出発。今日は、海抜2800m付近のヒマラヤ・ホテルを ****目指す。とは簡単なのだけれど、まず目の前にこのチョムロン村がある山と 高さが同じくらいの山がある。そして同じ標高あたり山小屋あり。そこはシニュワ、 予定では2時間程度だとディーパック。えっ! すぐそこに見えるあのあたりまで 2時間も?! それもその筈、我々の目の前には気の遠くなるような深ーーい谷が あるのだ。昨日苦労して登ってきた様な谷と同じ同じようなのを下って更に もう一度登る。ディーパックによれば今日2日目のトレイルは昨日ほど距離も 高度差もなく、この谷さえ越えれば後は楽勝(我々の足ならば)らしい。

 とにかく歩き始める。下りはあっと言う間に15分で踏破、川に架かった吊り橋の 前でフリースを脱ぐ。まだ、このあたりでは半袖Tシャツでも大丈夫だ。橋を渡り ここから登りだ。しかーし、今日のたかじろうは昨日までとはちょっと違うぜえっ! と、生意気咬ませるほどの余裕がある。ネパールガンジまでの2日間酒なしで過ごした ところでもって昨夜サン・ミゲールを浴びた効果なのか? なんのことはない、ガイドの ディーパックがたかじろうの荷の重さに見かねてザックを交換してくれたのだ。 うーん、らくちん、らくちん! 周りの景色がよく見える。山はこうでなくっちゃ。 やはりニコンFE2と24ミリ、50ミリ、200ミリズームフルセットは堪えるなぁ。

あまりの荷の軽さにどかどかとシニュワ(山小屋あり)まで駆け上がった。 谷底の吊り橋からここまでわずか1時間。おおーっつ、速いやん。

ろくに休憩を取らずに歩く。ここまで登った先はだらだらの斜面。またピッチが あがる。昨日や、今日ここまでのトレイルに比べると非常に楽だ。加えて高度を稼いだ おかげで気温も下がってきたようで非常に快適なのだ。 フラットに近いトレイルを進むとクルディ・ガールに到着。ここは山小屋ではなく 山岳警察のチェック・ポストがあるだけだ。ここでパスポートとトレッキング許可証を 提示して入山と下山予定を申告する。初日に麓の村ナヤプールで行ったのと同様な手続きだ。
ここで許可証にスタンプを押してもらうのでまたまたスタンプ・ラリースト (そんな単語あったのか? そうだ、スタンプ・マニアにしよう。ちなみにパラオで 見たESPNのプログラム、あの筋肉美を競うヤツ。あれはマッスル・マニアと いう番組でした。そうそう、ミザリーが食い入るように見ていたヤツですよ。) の血が騒ぐ。ここで下山してくるニッポン人カップルとガイドに出会う。 ここから上は3日前に大雪が降ったためデウラリ(たかじろうの目指すヒマラヤ・ホテル の次の山小屋、標高3000mを超えるところに位置する。)から上はかなり厳しいん じゃないかと言っている。もっとも彼らはドバンから折り返して来たので、更に 上から降りてきたガイドやボッカ(ポーター)の伝聞ではあるのだが。
しかし、この上天気にこの体調、ここで手をこまねいている訳にもいきますまい。 行けるとこまで登ろうとディーパックと決めた。そのニッポン人パーティーに行く先の 幸運と安全を祈願されつつ、また歩きはじめる。

次はバンブー(やはり山小屋がる)まではだらだらのくだり道だ。せっかくここまで 高度を稼いだのに下るのは勿体無くもある。しかし、入山初日にあんなに遠くに見えた 孤高のマチャプチャレがこんなに近くにある。80mmフレームに迫力の峰が写り込む。

(かなり具体的に感じていただけたでしょうか?)川の流れる谷に沿った道を歩くと 行く手に山が見えなくなる。樹々の枝に野生のサルがいる。妙な鳴き声だ。ここの山は いたるところに水場があるのでどこでも補給できるので有り難い。麓のトレイルにも 沢はあるけれどその上流に集落がある場合はやはり飲用には適さない。ここまで来ると さすがに安心して飲める。水は必要だけど運ぶのは大変だものなぁ。

バンブーに到着。クルディ・ガールからかなり下った谷底にあるのでマチャプチャレや アンナプルナの山々は見えない。そのせいか3軒ある山小屋はひとつしか営業していない。 そそくさとバンブーを後にする。ジワジワの上り道だ。景色が開けない道が続くため 黙々と歩くものだから非常にピッチがあがる。ドバンに着いたところで昼飯にする。 ここいらの山小屋で出されるメニューはだいたいどこも同じ、なんだか民宿の協定料金、 協定料理みたいなものである。里から離れと少しづつ値段があがる。それでも麓の村と 一番奥深い山小屋でも50%増しにもなっていないほどで、思ったより良心的だと思う。

昼はたいてい”ダル・バート”というヤツを食べている。ダルが豆(豆汁)、バードがご飯 だったかなぁ。さらさらのカレーライスのよう、おこちゃま用の仕切りのついた薄い皿に 盛られていて、カレーや漬物(のようなもの)が一緒に乗っている。見た目はかなり 粗食なのだけど(食っても粗食っぽいぞ)東京で食べたのより断然ウマイ。米のせいなの かなぁ? はたして、このダル・バートってやつはご飯にしろダルにしろ、カレーまで もういいというまでどかどかおかわりが出てくるのである。欠食児童モードのキムチも ウハウハのメシなのだ。 米はもちろん長粒米なのだがディーパックによるとネパール の米はインドの米と比べて断然ウマイのだそうだ。毎食ダル・バートしか食べない彼が いうのだからきっとそうなのだろう。彼はやはり山岳ガイドの仕事で2ヶ月ほどインド に行ったことがあるらしい。そのとき彼はネパールのダルが恋しくて仕方がなかった そうだ。是非食べて比べてみろとまで言う。しかし、これはまずいと言われてわざわざ 食べに行くことはないか・・・とこれを読んでいる君たちは思うだろうが密かにインド 入国(密入国ではないぞ)を企ているたかじろうの野心はメラメラと燃えているので あった。(ニッポンに帰るまでに真っ白な灰にならねばよいが・・・)
さて、歩くぞ! ここドバンから今日の目的地であるヒマラヤ・ホテルまでは一本 (休憩を挟まずに歩ける行程を示す山言葉)だ。ディーパックの行ったとおりのだらだら 登り、1時間程で到着。ここで本日の予定終了。まだ14時を回ったばかりなので たっぷり休めるゾ。まだ陽は高いがここはもうサン・ミゲール様の登場だ。

ここは昼飯を食べたドバンと違い戸外にテーブルをおいてあるスペースも広く 眺めも良い。右前方にマチャプチャレの頂が拝める。しかし昨日までのこの山は 正面(南側)しか見えなかったけれど今見ているのはその西面である。孤高峰であるので それだと判るが、稜線の印象がかなり違う。もっとも富士山みたいにどこから見ても 同じ方が珍しいのだが。もうここからはアンナプルナ・サウスは見えない。東側にある ヒンチュリに隠れているのだ。この辺りで標高2900m位、次のデウラリで3000mを 超え、M.B.Cで3600m、A.B.Cは4100mを超える。ここから先は 未体験の高さとなる。明日の天気が心配だ。ここ数日は実に良い天気に恵まれたが あと3日何とか天気が崩れないでほしい。ディーパックと小屋番のあんちゃんによれば 今晩あたりから雪が降るかも知れないなどと言っている。この夕刻の風と雲の具合が そう告げているらしい。行動予定は天候と体力に依存すけれど、天候による進退の判断は 初めっからディーパックに任せてあるのでたかじろうはだだサン・ミゲールをやるしか ほかにないのである。さて、サン・ミゲールをもう1本・・・

あっ、今日は大晦日だったのだ。ということは明日は元日なわけね。昨年のこの日は ベトナムはニャチャンの外国人バーでカウントダウンをやったのだ。今年は地味だが 高さで優るか?

(10)入山3日目
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