煽りレンズとは、レンズをずらしたり(シフト)、傾けたり(ティルト)できるレンズのことである。
キヤノンでは純正のレンズもあるのだが、これが馬鹿高いので、ベローズを使って煽りレンズを作ってみた。
なにやら少々卑猥な感じに突き出しているが、これでもちゃんと写真が撮れるのだ。
先端についているレンズはニコン EL-NIKKOR 105mmF5.6というもので、実はカメラのレンズではなく写真を引き伸ばすためのレンズである。
しかし絞りもちゃんとついていて、撮影に使うことも出来る。
引き伸ばしレンズは平面にピントを合わせるだけなので、正直言ってボケは全くよろしくないが、シャープネスは高いらしい。
「らしい」というのは、一度もまともな使い方をしたことがないので、シャープかどうかなどさっぱりわからないのである。
本当はEL-NIKKOR 75mmF2.8が焦点距離的にも向いているのだが、なかなか手に入らない。
まず、カメラ側のマウント部は、ジャンクレンズのマウント部を切り取ったものだ。
電子接点が取り除かれているが、これは当初は見た目の問題から残してあったのだがカメラがエラーを出して撮影不能になってしまうのでやむなく外してある。
どうやら、接点が接続しているのにレンズが反応しないのでカメラがエラーと判断するようである。
レンズ側マウントは、M39-M42アダプタである。
これはアルミ削り出しのものなので、思い切ってアクリル板にプラリペアで固定してしまった。
これは後からきれいにはがすことができる。
横から見るとこんな感じ。
さて、このレンズの使い方であるが、なにしろ支えが柔らかい蛇腹しかないのでそのままでは力なくうなだれてしまって少々情けない。
また、このレンズはピント合わせのためのヘリコイドがないので、ピント合わせはレンズボードをつかんで前後に伸び縮みさせることで行う。
太い棒を引っつかんで前後に動かすという、かなりアレな動作であるがやむをえない。
そして、このレンズの真骨頂、煽り操作であるが、これまた単にマウント板をぐいっと傾けるだけである。
レンズを傾けると、ピント面が傾くので、ピントの距離を画面の場所によって変えることができるのである。
これは本来、斜めになった被写体の全体にピントを合わせるために使うものなのだが、を逆に使うことで極端にピントの浅い表現が可能なのだ。
その効果は、とにかく実際に見てもらったほうが早い。
これは、ミニチュアではなく、現実の景色だ。
なのに、車がみんなミニカーにしか見えない。
どういうわけか逆煽りをするとこんな感じに非現実的なミニチュアチックな写真ができあがるのである。
見慣れた光景がみんなミニチュアの箱庭みたいになってしまうのが面白いというわけである。
なぜそう見えてしまうのかというと、本来なら全体にピントが合っているはずの遠景が、極端に被写界深度が浅くなってしまっている。
被写界深度が浅いということは、通常ならかなり近接している場合である。
つまり、遠景なのに被写界深度が浅いという不自然な状況なため、まるでミニチュアを接写したような錯覚を起こしてしまうのである。
ちなみに煽る量によって「ミニチュア感」が変わってくるので、「自然なミニチュア」といったものが撮れるようになるにはかなり練習が必要だ。
なおEOSの場合はこのような電子接点のないレンズでも実絞り測光AEが可能だ。
しかし、煽るとほとんどAEは使い物にならず、3〜4段も外すぐらい大きくオーバーになる。
どうやら測光センサに斜めに光が入ることによって測光精度が落ちるためらしいがはっきりしたことはわからない。
もっとも、ここはデジタルの強みを生かしてマニュアルモードで適当に撮ってヒストグラムを見ながら微調整することで簡単に対処できる。
また、ティルトする加減がなかなか難しく、ファインダー上ではうまく見えていても実際に撮影してみるとボケ方が斜めになっていたりしてなかなかうまくいかない。
うまく撮るにはまだまだ修行が必要なようである。
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