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サヨリ科(Hemiramphidae)-サヨリ

サヨリ(標本)
サヨリ(標本)

和名:サヨリ
英明:Japanese halfbeak
学名Hyporhamphus sajori (Temminck and Schelegel,1846)
撮影:S.Goto(上野国立科学博物館)
分布:琉球列島と小笠原諸島をのぞく北海道南部以南の日本各地~朝鮮半島、黄海。渤海湾
特徴:海面を群れをなして泳ぎ、危険を感じるとよく空中にジャンプする。サヨリ科には淡水域にまで侵入する種が多く知られるが、本種は汽水域までは進入するものの純淡水域にまでは進入しない。沿岸域の特に海藻の繁茂する岩礁域に多い。表層域を群れで回遊する。
全長は40cmを超える。体形は細長い。両顎は尖り、下顎は上顎よりも長く突出する。下顎の長さが上顎先端から鰓蓋後端までの長さよりは短いこと、下顎の先端は普通赤味を帯びることなどが特徴。下顎の先端は生きているときには赤い。背中は青緑色だが腹側は銀色に輝き、筋肉は半透明である。本種のように下顎が突き出した特殊な形体の口器の適応的意義はよくわかっていない。トビウオ上科のトビウオ類も、稚魚のときに同じような下顎の伸張が起こることが知られている。
主に動物プランクトンを捕食し、浮遊する海藻の断片なども摂食する。
産卵期は4月中旬から8月中旬、群れで藻場に入り込み、メダカの卵に似た直径2.2mm程度の大粒の卵を、粘着糸で海藻や海草に絡み付ける。孵化直後の仔魚は全長7mm程度で、これが2.5cm程度まで成長すると下顎の伸張が始まる。下顎はいったん成魚よりも全長比で長く伸張するが、次第に体の他の部分の成長が著しくなり、全長27cm程度になると、ほぼ成魚と同じプロポーションになる。寿命は2年余りと考えられている。
春から秋にかけて漁獲されるが、旬は3月から5月にかけてとされる。寿司ネタや刺身、天ぷら、干物などにして賞味され、高級魚として扱われることが多い。刺身など非加熱で調理するときは、たて塩にすると持ち味の甘みが引き立つとされる。遊漁の対象としても人気が高く、関東ではウキ釣りやフカセ釣り、関西ではシモリや連タマと呼ばれるウキが3~10個連なった仕掛けがよく用いられる。海から川へ溯ることもあり竹竿に釣り糸を張って弓状にして糸を川に沈め水面を溯上するサヨリを引っ掛けて釣ることもある。腹膜は真っ黒で俗に「見かけによらず腹黒い人」の代名詞とされることもある、これは筋肉が半透明で光を透過しやすい魚によく見られる特徴で、腹腔内に光が透過するのを防ぐ適応と考えられている。
同様に腹膜が黒い、コイ科の淡水魚ハクレンでは、成長に伴って動物プランクトンから植物プランクトンに食物が移行する。この時期に急速に腹膜が黒変することが知られているが、この移行時期に強い日光を浴びると、消化管に取り込まれた植物プランクトンが光合成を行って酸素の気泡が発生し、消化管が膨れ上がって水面に腹を上にして浮かぶなどの障害が発生することが報告されている。本種も成長に従って海藻も食べるようになるため、摂食した海藻の光合成を抑制するためではないかと考えられている。中国でも、山東省で「針涼魚(簡体字 针凉鱼) チェンリアンユー」、「馬歩魚(马步鱼) マーブーユー」と称して、渤海湾や黄海で漁獲され、流通している。中国語の標準名は「小鱗鱵(小鳞鱵)xiǎolínzhēn シアオリンチェン」。


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