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ハゼ科(Gobiidae)-ムツゴロウ
和名:ムツゴロウ 英明:- 学名:Boleophthalmus pectinirostris (Linnaeus,1758) 撮影:S.Goto(上野国立科学博物館) 分布:日本・朝鮮半島・中国・台湾に分布するが、日本での分布域は有明海と八代海に限られる。 特徴:河口域の干潟に生息する。泥に巣穴をほり、満潮時にはその中に潜む。干潮時に活発に活動する。有明海・八代海の干潟は多良山系・阿蘇山などの火山灰に由来する細かい泥質干潟で、干潟の泥粒が粗いと体が傷つき弱ってしまう。 成魚は全長15cm、最大で20cmに達する。体色は褐色から暗緑色で、頭部側面、体側、背鰭、尾鰭にも鮮やかな白か青の斑点がある。両目は頭の一番高いところに突き出ていて、周囲を広く見渡すことができる。第1背鰭は5棘からなり、鎌状ではない。腹鰭は吸盤状。下顎にはひげはない。 植物食性で、干潟の泥の表面に付着している珪藻などの底生藻類を食べる。口は大きく、上顎にはとがった歯が生えているが、下顎の歯はシャベル状で前方を向いている。口を地面に押し付け、頭を左右に振りながら下顎の歯で泥の表面に繁殖した藻類を泥と一緒に薄く削り取って食べる。 産卵期は5月中旬から7月末で、産卵期の雄はさまざまな方法で雌を誘う。干潟の上を跳ね、二つの背鰭と口を大きく広げて求愛する。 氷河期の対馬海峡が陸続きだったころに東シナ海沿岸に大きな干潟ができ、その際に本種が大陸から移ってきたと考えられている(大陸系遺存種)。 干潮時の干潟で活動するトビハゼ、トカゲハゼ、同じく干潟表面の珪藻を食べるタビラクチなどと共にオキスデルシス亜科に属する。英語ではこれらを総称し"Mudskipper"(マッドスキッパー)と呼ぶ。 干潟では胸びれで這ったり、全身で飛び跳ねて移動する。干潟の上で生活できるのは、皮膚と口の中に溜めた水で呼吸するためといわれる。陸上生活ができるとはいえ皮膚が乾くと生きることができず、ときにゴロリと転がって体を濡らす行動がみられる。直径2メートルほどの縄張りを持ち、同種だけでなく同じ餌を食べるヤマトオサガニなども激しく攻撃して追い払う。反対に、肉食性のトビハゼとは餌が競合しないので攻撃しない。 1年のうちで最も活発に活動するのは初夏で、本種の漁もこの時期に行われる。この時期には雄がピョンピョンと跳ねて求愛したり、なわばり内に侵入した他の雄と背びれを立てて威嚇しあったり、激しく戦ったりする姿が見られる。有明海ではむつかけという独特の引っかけ漁で漁獲され、蒲焼など美味。有明海沿岸ではムツ、ホンムツなどと呼ばれる。 雌は巣穴の横穴部分の天井に産卵し、雄が孵化するまで卵を守る。孵化した稚魚は巣穴から泳ぎだし、しばらく水中で遊泳生活を送るが、全長2cmほどになると海岸に定着し干潟生活を始める。 近年干拓が大型化しており、生息する泥干潟を減少している。ダムや堰の建設や河川改修も、干潟の形成や餌料珪藻の生育とのかかわりから本種の生息に影響していると考えられる。環境省レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されている。 |
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