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タイ科(Sparidae)-クロダイ(チヌ)
和名:クロダイ(チヌ) 英明:Black porgy 学名:Acanthopagrus schlegeli (Bleeker,1854) 撮影:S.Goto(東海大学海洋科学博物館) 分布:北海道以南、琉球列島をのぞく日本各地。朝鮮半島南部、中国北中部、台湾 特徴:奄美大島以南の南西諸島には分布せず、ミナミクロダイ、ナンヨウチヌ、ヘダイといった近縁種が分布する。タイ科の大型魚としては珍しく、水深50m以浅の沿岸域の藻場や岩礁、砂泥底といった広い範囲に生息する。河口の汽水域にもよく進入する。 環境への適応力も高く、岩礁から砂泥底まで見られ、汚染にも比較的強い。冬は深みに移動するが、夏は水深1~2mの浅場に大型個体がやって来ることもある。夏から秋には海岸域で全長10cm足らずの若魚を見ることができる。小規模な群れを作り、移動をする個体と地着きの個体とが知られている。 全長は一般的に30cm程度、最大70cmを超える大型種。体型は左右から押しつぶされたように平たい楕円形で、典型的な鯛の体型だが、マダイに比べると口が前に突き出す。背側と鰭膜は和名通り黒-灰色で、腹側は白色である。不明瞭な縦縞があるものも多い。鰓蓋上端・目の後方やや上に、目と同程度の黒斑が一つある。顎の前方には3対の犬歯、側面には3列以上の臼歯があり、ヘダイ亜科の特徴を示す。背鰭は11棘条11軟条、尻鰭は3棘条8軟条からなり、クロダイ属のラテン語名"Acanthopagrus"は発達した棘条に由来する。特に尻鰭の第2棘条が強大に発達する。側線鱗数(そくせんりんすう)は48-56枚、背鰭と側線の間の鱗は6-7列で、この点で近縁種と区別できる。若魚までは体側に数本の横帯が見られ、幼魚の各鰭は黄色っぽくなることもあり、時々キチヌと間違われることもある。 他のタイ科と同じく小魚や甲殻類、貝類、多毛類、軟体動物など様々な小動物を捕食するが、本種はタイ科でもかなりの悪食で海草なども食べる。時には水に落ちたスイカなども食べる。そのため、釣り餌にスイカやミカン、メロンなどを用いる地域もある。 若魚はスーッと泳いではピタッと停まるのを繰り返しながら餌を探す。 産卵は春に海域で行われ、直径0.8-0.9mmほどの分離浮性卵を産卵し、水温20度では約30時間で孵化する。孵化直後の仔魚は体長2mmほどで卵黄嚢をもつ。体長8mmほどから砂浜海岸の波打ち際や干潟域、河口域などの浅所に集まり、プランクトンを捕食して成長する。生後1年で体長12cm、5年で26cm、9年で40cmほどに成長するが、マダイと比べると成長が遅い。 成長によって性転換する魚としても知られる。マダイなど一般的に性転換する魚はメスからオスに性転換するが、本種を含めたヘダイ亜科は雄性先熟を行い、オスからメスに性転換する。2-3歳までは精巣が発達したオスだが、4-5歳になると卵巣が発達してメスになる。ただし全てがメスになるわけではなく、雌性ホルモンによって性転換しない場合がある。身は磯臭いと言われることが多く、マダイと比較すると市場価値はやや劣る。釣りの対象魚として人気が高い。 |
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